HA4とは?
HA4は生体内にある最小のヒアルロン酸で、体内のヒアルロン酸分解酵素の最終分解産物のひとつがHA4です。分子量:は約800で、その大きさは2nm(ナノメートル)と非常に小さなヒアルロン酸です。
HA4の可能性
HA4(4糖鎖ヒアルロン酸)の応用
化粧品
HA4の皮膚への塗布でヒアルロン酸の産生促進を確認しました。
右の写真は、ブタの皮膚の毛を剃り、そこに高分子量(分子量80万)のヒアルロン酸を含むクリーム、HA4(4糖鎖ヒアルロン酸)を含むクリーム、およびそのクリームの基剤のみ、を塗布して、数日後に皮膚を切り出し、ヒアルロン酸の分布を観察したものです。ヒアルロン酸に特異的に結合するHABPという物質を使ってヒアルロン酸を染色したところ、基剤のみの皮膚でも茶色く染まるのは、皮膚なのでもちろんヒアルロン酸があるからですが、HA4(4糖鎖ヒアルロン酸)を塗布したサンプルでは特に染色が強くなっています。その後、ヒアルロン酸を分解する酵素であるヒアルロニダーゼでこの皮膚の切片を処理すると消えたことからも、この染色はヒアルロン酸であることが証明されます。この染色に用いたHABPという物質はヒアルロン酸に特異的に結合するのですが、サイズが10糖以上の大きさがないと結合しません。つまり、このHA4を塗布した皮膚で茶色く染まっているのは、塗布したHA4が皮膚に浸透してそれが染まっているのではなく、その部位での高分子量のヒアルロン酸合成が促進されたのだ、ということを示しています。
非臨床実験でHA4の高分子ヒアルロン酸の産生促進効果を確認しました。
in vitroの実験でHT1080細胞を使用し、HA4(4糖鎖ヒアルロン酸)による高分子ヒアルロン酸の産生促進効果を試したところ、HA4を添加した細胞群の方が無添加の細胞群と比較して高分子ヒアルロン酸の増加が確認できました。
サプリメント
HA4の体内吸収性を確認しました。
ヒアルロン酸は食べても分解されるため体内吸収は起こらないとされていましたが、HA4(4糖鎖ヒアルロン酸)は小腸から吸収され血中移行することを当社の実験で確認する事ができました
右のグラフはHA4(4糖鎖ヒアルロン酸)の経口投与後の血中濃度測定をしたグラフです。マウスにHA4を経口投与(100 mg/kg)し、15分、60分後に腹腔大動脈より採血し、HA4を検出しました。経口で投与されたHA4の約140分の1が血中へ移行する事がわかりました。これまでの試験により、血中での有効濃度は100 ng/ml以下であると考えられます。
脊髄損傷
現状とHA4
交通事故や、スポーツ事故により起きる脊髄損傷は、身体の麻痺を引き起こします。現在、日本では10万人の患者さんが苦しんでおり、またその数は年間5000人のペースで増え続けています。現在では有効な治療法は確立されておらず、治療法の迅速な確立が求められています。これまでの研究により、HA4に神経保護作用があることがわかってきました。当社では、HA4の脊髄損傷への適応への可能性を模索しています。ラットにおける脊髄損傷モデル(重錘落下法)において、HA4はその回復速度を促進することが明らかになっています。
脊髄損傷モデルでのHA4の治療効果を確認したところ、投与前は後ろ足を引きずっていたモデルがHA4投与後には自然な歩行が可能となり、後ろ足のみで立つまでに回復しています。これは脊髄損傷による神経の断裂が治癒・再生し、運動機能が戻った可能性を示唆しています。
NEDO予算による当社の「脊髄損傷への応用研究」から抜粋しました。
BBBスコア:後肢運動機能の評価法の一つ、オープンフィールドBBB スコアリングシステム(Basso-Beattie-Bresnahan Locomotor 法)に基づいて運動機能の評価を行った時の評価点。後肢の自発的運動が全くみられない場合、評点は0となり、正常な後肢の運動がみられる場合は、評点は21となる。
多発性硬化症
現状とHA4
変形性関節症
現状とHA4
変形性関節症は、軟骨・骨の変性疾患であり、関節の痛み、腫れ、関節液の増加、などといった症状が見られます。加齢とともに発症しやすく、日本での患者数は700万人以上といわれています。中高年以上に多く発症し、QOLに大きな影響を与えています。
当社におけるこれまでの研究においてHA4を含むクリームをブタの皮膚に塗布したところ、高分子のヒアルロン酸量が増加したというデータが得られています。高分子のヒアルロン酸は変形性関節症の治療薬として使用され、軟骨変性の抑制作用や疼痛抑制といった効果があることが知られています。
そこで我々はHA4にも変形性関節症に対し効果があるのではないかと推測し、マウス変形性関節症モデルを用いてHA4の効果を検討しました。その結果、HA4にも変形性関節症の症状が緩和(後肢状態スコアの改善、X線写真撮影による関節変性の抑制の確認)されることが明らかとなりました。